- 建設業の赤字工事は「原価が見えていない」のではなく「見えるのが遅い」ことで起きる。竣工後に発覚した時点で、打てる手はほぼ残っていません。
- 工事別原価管理の核は、材料費・労務費・外注費・経費の4要素を工事番号ごとに、発生した時点で紐づけること。Excelの工事台帳が破綻するのはここです。
- 実行予算は「作って終わり」ではなく「実績と突き合わせて途中で修正する」もの。予算比の消化率が週次で見えるだけで、判断のタイミングが2〜3か月早まります。
- 既製の建設原価ソフトは元請前提の設計が多く、下請・孫請の商流(常用・出来高・歩掛・支給材)にそのまま当てはまらないケースが少なくありません。
- 費用相場は既製ソフトで月額2〜10万円、カスタム開発で150〜900万円程度。既製で足りるならそれが最善で、合わない部分だけをつなぐ選択肢もあります。
結論:建設業の原価管理でシステム化すべきなのは「集計」ではなく「タイミング」です。工事が終わってから正確な原価を出すことは、Excelでも十分できます。しかし利益を守るために本当に必要なのは、工事の途中で「この現場、このままだと予算を超える」と気づける仕組みです。
本記事では、工事別原価の4要素をどう集計するか、実行予算と実績をどう突き合わせるか、進行途中の粗利をどう掴むかを、実務の手順レベルで解説します。あわせて、既製の建設ソフトが自社の商流に合わないときの判断基準と、カスタム開発を選ぶ場合の費用相場・進め方までまとめました。年商1〜20億円規模の工務店・建設会社で、Excelの工事台帳に限界を感じている方に向けた内容です。
- 工事が終わって請求書が出そろってから、「この現場、赤字だった」と初めて分かる
- 実行予算はExcelで作っているが、着工後に更新されず、途中経過は誰も見ていない
- 外注先からの請求が翌月・翌々月に来るので、今どこまで原価を使ったのか掴めない
- 現場ごとの材料費が、伝票の山と現場監督の記憶にしか存在しない
- 経理が月末に工事台帳へ手入力していて、締めるのに1週間かかる
- 建設ソフトを入れてみたが、自社の下請け・常用・出来高の商流に合わず、結局Excelに戻った
1つでも当てはまるなら、この記事が役に立ちます。読む時間がない方は、無料相談で直接お答えします。
建設業の原価管理システムとは
ここが混同されやすいポイントです。会計ソフトを入れているから原価管理はできている、と考えている会社は少なくありません。しかし会計ソフトが答えられるのは「今期の売上と粗利はいくらか」であって、「今動いている12本の工事のうち、どれが危ないか」ではありません。
建設業が他業種と決定的に違うのは、次の3点です。
- 案件の期間が長い——数か月から1年以上。売上と原価の発生タイミングがずれ、期をまたぐこともある
- 案件ごとに原価構造が違う——同じ「戸建て新築」でも、仕様・地盤・職人の手配状況で歩掛も外注比率も変わる
- 原価の確定が遅い——外注先や資材商社からの請求が、作業完了から1〜2か月遅れて届く
この3つが重なると、「気づいたときには終わっている」構造が生まれます。原価管理システムの本質的な役割は、この時間差を縮めることにあります。
押さえておきたい前提:本記事の会計・税務に関する記述は2026年時点の一般的な情報です。工事契約の収益認識や原価計算の具体的な扱いは、企業規模・適用基準・個別の契約内容によって異なります。最終的な判断は顧問税理士・公認会計士など専門家にご確認ください。
なぜExcelの工事台帳では原価が「間に合わない」のか
誤解のないように書きますが、Excelが悪いわけではありません。工事台帳としてのExcelは、集計表としては十分に機能します。問題は「誰が」「いつ」入力するか、という運用の側にあります。
Excel運用が崩れる4つの瞬間
月末にまとめて入力する
現場から上がってくる伝票を経理が月末に一括入力。結果、月の途中は台帳が空白で、リアルタイムの原価は誰にも見えません。締めてから気づいても、その工事はもう2〜3工程進んでいます。
どの現場の費用か分からない伝票
資材の伝票に工事番号が書かれていない、複数現場分がまとめて1枚になっている。この仕分けに毎月何時間もかけている会社は珍しくありません。
「最新版」がどれか分からない
実行予算_A様邸_最終_修正2.xlsx。担当者ごとにコピーが増え、どれが正なのか分からなくなる。集計時に古い版を拾ってしまう事故も起きます。
組んだ人しか触れない
複雑な関数とシート間参照で組まれた台帳は、作った人が休むと誰も更新できません。退職と同時に原価管理が止まる、というリスクを抱えることになります。
「原価が見えるまでの日数」を可視化してみる
典型的な建設会社で、作業が発生してから原価として台帳に載るまでのタイムラグを整理すると、次のようになります(一般的なモデルケース)。
| 原価の種類 | 発生から把握までの目安 | 遅れる主な理由 |
|---|---|---|
| 材料費(現場調達) | 7〜20日 | 伝票が現場に滞留し、事務所に届くのが遅い |
| 材料費(商社仕入) | 30〜45日 | 月締め請求のため翌月にならないと金額が確定しない |
| 労務費(自社工) | 15〜35日 | 日報の集計と給与計算のサイクル待ち |
| 外注費 | 30〜60日 | 出来高査定→請求書受領→検収のステップが直列 |
| 経費(重機リース等) | 30〜40日 | 月次請求。現場配賦のルールが曖昧なケースも |
※ 上記は一般的なモデルケースであり、成果を保証するものではありません。
つまり、外注比率の高い工事では「実際の原価が見えるのは、作業が終わってから1〜2か月後」という状態が構造的に生まれます。3か月の工事なら、半分が終わった頃にようやく序盤の原価が見え始める計算です。これでは軌道修正のしようがありません。
ヒント:原価管理システムの導入効果を測るとき、「集計時間が何時間減ったか」よりも「原価が見えるまで何日縮まったか」を指標にすると、経営判断への効き方が分かりやすくなります。
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工事別原価の4要素と、それぞれの集計の壁
1. 材料費
木材、鉄筋、生コン、建材、設備機器など。集計の壁は「工事番号との紐づけ」です。現場で急ぎ調達したホームセンターのレシート、複数現場に分納された商社の一括請求。これらを漏れなく現場に割り当てるには、発注の時点で工事番号を持たせる仕組みが要ります。
システム化のポイントは、発注書に工事番号を必須項目として持たせ、そのまま検収・請求照合まで引き継ぐこと。入口で番号がついていれば、後工程の仕分け作業はほぼ消えます。
2. 労務費
自社の職人・現場社員の人件費。集計の壁は「日報」です。誰が、どの現場で、何時間働いたか。紙の日報を月末に集計している限り、労務費は常に1か月遅れになります。
ここは現場からのスマートフォン入力が最も効きます。ただし「入力項目が多すぎて誰も入れない」という失敗が非常に多い領域でもあります。最初は現場・日付・工数(時間または人工)の3項目だけに絞るのが現実的です。
3. 外注費
協力業者への支払い。金額が最も大きく、かつ最も見えにくいのがここです。壁は「請求が来るまで確定しない」こと。
解決の考え方は2段階です。まず発注時点の金額を「予定原価」として台帳に載せる。次に月次の出来高査定で「発生見込」を更新する。請求書が届いてから実績に置き換える。この3段構えにすると、請求前でも精度の高い着地見込みが持てます。
4. 経費
重機リース、仮設、運搬、産廃処理、現場事務所費用、そして共通費の配賦。壁は「配賦ルールが曖昧」なことです。複数現場で使い回している重機の費用を、どの現場にいくら乗せるのか。ここを決めずにシステムを入れると、出てくる数字を誰も信用しなくなります。
設計の順番として重要なこと:システムを検討する前に、「共通費・間接費をどう配賦するか」を社内で決めてください。売上高比・直接原価比・工数比など方法はいくつもありますが、正解は会社ごとに違います。ここが決まっていないと、どんなシステムを入れても数字がブレます。
4要素の構成比イメージ
工種によって差はありますが、一般的な建築工事における原価構成の目安は次のような形です(一般的なモデルケース)。
※ 上記は一般的なモデルケースであり、成果を保証するものではありません。
この比率が示すのは、原価管理システムの投資効果は「外注費をどれだけ早く掴めるか」でほぼ決まるということです。細かい経費の自動仕訳より、外注の発注・出来高・請求のサイクルを整えるほうが、金額インパクトは桁違いに大きくなります。
実行予算とは|見積原価との違いと運用のリアル
見積原価と実行予算は必ずズレる
見積は受注前に作るため、地盤の状態、近隣条件、職人の手配状況、資材価格の変動などが織り込みきれません。実行予算はこれらを踏まえて組み直すもので、両者にズレがあること自体は正常です。
問題は、ズレたまま誰も気づかないことです。見積粗利25%で受注したのに、実行予算を組んだ時点で18%まで落ちている——この事実が経営層に伝わらないまま着工してしまうケースは、想像以上に多くあります。
| 項目 | 見積原価 | 実行予算 |
|---|---|---|
| 作成タイミング | 受注前(営業段階) | 受注後・着工前 |
| 作成者 | 営業・積算担当 | 現場責任者・工事部 |
| 粒度 | 工種別の概算 | 工種別+費目別+業者別 |
| 目的 | 受注価格の根拠 | 利益確保のための執行計画 |
| 更新 | 基本的に更新しない | 工事進行に応じて改訂する |
実行予算が「作って終わり」になる理由
多くの会社で、実行予算は着工前に一度作られたきり更新されません。理由はシンプルで、更新するための実績データが手元にないからです。実績が見えなければ比較のしようがなく、比較できなければ改訂の必要性も分かりません。
逆に言えば、実績がリアルタイムに入る仕組みさえあれば、実行予算は自然に「生きた道具」になります。原価管理システムを入れた会社で最初に起きる変化は、実は集計時間の短縮ではなく、現場責任者が自分から予算を見に来るようになることです。
実行予算vs実績を「週次」で見るとどう変わるか
ここが本記事で最もお伝えしたい部分です。原価管理システムの価値は、月次を週次に変えることにあります。
比較すべき3つの数字
- 予算消化率——実行予算に対して、現時点で何%の原価を使ったか
- 出来高進捗率——工事全体のうち、何%が完成しているか
- 両者の差——予算消化率が出来高進捗率を上回っていれば、赤字の予兆
この3つを並べるだけで、危険な工事は一目で分かります。例えば「予算消化62%・出来高進捗45%」という現場は、このペースが続けば予算を大幅に超過します。逆に「予算消化30%・出来高進捗40%」なら順調です。
早く気づくと、実際に何ができるのか
「早く分かっても、もう発注済みだから変えられない」という声をよく聞きます。確かに確定した契約は変えられません。しかし、まだ着手していない後工程については選択肢があります。
- 残工程の仕様を施主と協議し、代替案を提示する
- 未発注の工種について、業者の見直しや工法の変更を検討する
- 自社工と外注のバランスを組み替え、手配コストを調整する
- 追加工事・変更工事の請求漏れがないか洗い出す(これが意外に大きい)
- 次回以降の見積に、判明した歩掛のズレを反映する
特に4つ目の追加・変更工事の請求漏れは、多くの会社で放置されている利益です。「言った・言わない」を避けるため請求しないまま飲み込んでいる分が、原価として可視化されると初めて金額が見えます。
ヒント:追加工事の指示があった時点で、システム上に「変更申請」として記録し、金額と承認者を残す運用にしておくと、請求漏れは大きく減ります。システムの機能というより、記録が残る場所を作ることが本質です。
進行途中の粗利を掴む|出来高と原価進捗の考え方
会計上の収益認識の扱いは企業規模や適用基準によって異なりますが、管理会計としての進行途中の粗利把握は、どの規模の会社でも実施する価値があります。税務申告のための数字と、経営判断のための数字は別物と考えてください。
出来高の測り方は3通り
| 方法 | 考え方 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 原価比例法 | 発生原価 ÷ 見積総原価 | 原価データが揃っている工事全般 |
| 工程出来高法 | 完了した工程の契約金額割合 | 工程が明確に区切れる建築工事 |
| 数量出来高法 | 施工数量 ÷ 総数量 | 土木・舗装など数量ベースの工事 |
実務上は、原価比例法をベースにしつつ、現場責任者の工程出来高の感覚で補正するハイブリッドが多く使われます。ここでシステム側に求められるのは、現場が肌感で入力した進捗率と、原価から機械的に計算した進捗率を並べて表示することです。この2つが大きく乖離している工事こそ、要注意の現場です。
着地見込みを出す
進捗率が分かれば、着地見込原価が計算できます。
着地見込原価 = 実績原価 + 残工程の発注済未検収額 + 未発注分の予算残
この式で出した見込原価と契約金額を比べれば、竣工時の粗利が推定できます。手計算でも可能ですが、工事が10本20本と動いている会社では、システムで自動計算しないと現実的に回りません。
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原価管理システムの主要機能チェックリスト
製品選定や要件整理の際に、自社にとって必要な機能を切り分けるためのチェックリストです。すべてが必要なわけではありません。優先度をつけることが目的です。
必須級の機能
- 工事マスタ——工事番号、工期、契約金額、担当者、工種区分の管理
- 実行予算登録——工種別・費目別の予算入力と、改訂履歴の保持
- 発注管理——発注時点で工事番号と予算科目に紐づく発注書の発行
- 実績入力——請求書・伝票・日報からの原価計上
- 予実対比——予算・発注済・実績・残予算を1画面で表示
- 工事一覧ダッシュボード——全工事の予算消化率を並べて危険工事を検知
あると効く機能
- 出来高査定——協力業者ごとの月次出来高入力と支払査定
- 日報入力(スマホ)——現場からの工数入力
- 写真・書類の紐づけ——工事番号に対して現場写真や施工図を集約
- 会計ソフト連携——確定した原価データの仕訳エクスポート
- 追加・変更工事管理——変更指示の記録と請求漏れ防止
- 資金繰り連動——入金予定と支払予定から現預金推移を見る
優先順位の付け方
限られた予算で最大の効果を出すなら、「金額が大きく、把握が遅いもの」から着手するのが原則です。前述の通り、多くの建設会社では外注費がこれに該当します。逆に、経費の細かい自動仕訳は金額インパクトが小さく、後回しでも構いません。
| 着手順 | 対象 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 第1段階 | 工事マスタ+実行予算+発注管理 | 発注時点で予算残が見える。超過発注を事前に止められる |
| 第2段階 | 実績計上+予実対比ダッシュボード | 週次で危険工事が分かる。経営会議の議題が変わる |
| 第3段階 | 日報・出来高・会計連携 | 入力の手間が減り、精度と鮮度がさらに上がる |
既製の建設ソフトが「自社に合わない」典型パターン
建設業向けの原価管理ソフトは数多くあり、機能も充実しています。多くの会社にとって、まずは既製品を検討するのが正しい順序です。それでも「合わなかった」という声が絶えないのはなぜか。よくあるパターンを整理します。
パターン1:元請前提の設計になっている
市販の建設原価ソフトの多くは、元請として工事を受注し、協力業者に発注する流れを前提に作られています。一方、下請・孫請として仕事を受ける比率が高い会社では、そもそも商流が違います。
- 元請から支給される材料(支給材)をどう原価に扱うか
- 常用(人工出し)と請負が混在する契約形態
- 元請の締め日・査定サイクルに合わせた出来高報告
- 1つの現場に複数の元請が絡むケース
これらが標準機能で扱えず、結局Excelとの二重管理になってしまう。よくある行き詰まりです。
パターン2:歩掛・単価体系が自社と違う
ソフトに内蔵されている標準単価や歩掛は、自社の実態と一致しないことがあります。特に専門工事業では、社内で長年蓄積してきた独自の歩掛が競争力の源泉になっているケースも多く、それをソフトの体系に合わせて作り直すのは本末転倒です。
パターン3:入力項目が多すぎて現場が使わない
高機能なソフトほど入力項目が多く、現場が入力してくれません。結果、データが埋まらず、出てくる数字が信用できなくなり、使われなくなる。これは製品の問題というより、機能過多と現場の実態のミスマッチです。
パターン4:既存の仕組みと連携できない
すでに使っている会計ソフト、給与計算、施工管理アプリ、顧客管理と連携できず、同じ情報を何度も入力することになる。API連携が用意されていない製品も少なくありません。
正直に言うと:上記に当てはまらないなら、既製ソフトで十分です。むしろ既製で足りるのにフルスクラッチで作るのは、コストも保守負担も無駄になります。私たちも、お話を伺ったうえで「それは市販ソフトのほうが早くて安いです」とお伝えすることがよくあります。
パッケージ・SaaS vs カスタム開発の比較
| 比較軸 | 建設業向けパッケージ・SaaS | カスタム開発 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 0〜50万円 | 150〜900万円 |
| 月額費用 | 2〜10万円 | 1〜5万円(保守) |
| 導入までの期間 | 1〜2か月 | 3〜8か月 |
| 自社の商流への適合 | 製品の想定と合えば◎、外れると△ | 自社の実態に合わせて設計できる |
| 下請・常用・支給材への対応 | 製品による。標準機能では扱えないことも | 実際の契約形態に合わせて実装可能 |
| 独自の歩掛・単価体系 | 製品の体系に合わせる必要がある | 既存の考え方をそのまま持ち込める |
| 入力画面のシンプルさ | 汎用のため項目が多くなりがち | 自社に不要な項目は最初から作らない |
| 他システム連携 | 用意された連携先に限られる | 会計・給与・施工管理と自由に接続 |
| 法改正・機能追加 | ベンダーが自動対応 | 都度対応が必要(保守契約で対応) |
| 仕様変更のスピード | 要望を出しても実現は不確実 | 必要なタイミングで改修できる |
既製品で十分なケース
次のいずれにも当てはまるなら、既製の建設原価ソフトを選ぶのが合理的です。
- 元請として受注する工事が中心で、商流がシンプル
- 工種が比較的定型で、標準的な原価区分に収まる
- 既存の会計ソフトが、検討中のソフトと標準連携できる
- 現場の入力負荷を運用ルールで吸収できる体制がある
- まずコストを抑えて、素早く始めたい
カスタム開発を検討すべきケース
- 下請・孫請の比率が高く、支給材や常用が日常的にある
- 複数の元請ごとに、締め日・査定方法・帳票様式が異なる
- 独自の歩掛・原価計算ロジックが競争力になっている
- 既存の基幹システムや施工管理アプリと深く連携させたい
- 過去に建設ソフトを導入して、合わずに離脱した経験がある
- グループ会社や複数事業部で、原価の見方を統一したい
第3の選択肢もあります:既製の会計ソフトや施工管理アプリはそのまま活かし、自社の商流に合わない「工事別原価の集計と予実管理」の部分だけをカスタム開発して連携する、という進め方です。全面刷新よりコストを抑えられ、現場の学習負担も小さくて済みます。LUCRISでは、既製品を活かせる部分は活かす前提で設計をご提案しています。
費用相場と投資回収の考え方
カスタム開発の規模別費用目安
| 規模 | 主な機能範囲 | 費用目安 | 期間 |
|---|---|---|---|
| スモールスタート | 工事マスタ+実行予算+実績入力+予実対比画面 | 150〜300万円 | 3〜4か月 |
| 標準 | 上記+発注管理+出来高査定+会計ソフト連携 | 300〜600万円 | 4〜6か月 |
| 本格 | 上記+スマホ日報+写真書類管理+資金繰り+権限管理 | 600〜900万円 | 6〜8か月 |
| 連携アドオンのみ | 既存ソフトを活かし、原価集計と予実管理だけ追加 | 80〜250万円 | 2〜3か月 |
※ 上記は一般的なモデルケースであり、成果を保証するものではありません。
ランニングコスト
| 項目 | 内容 | 月額目安 |
|---|---|---|
| サーバー費用 | クラウド利用料(利用人数・データ量による) | 0.5〜3万円 |
| 保守サポート | 障害対応・軽微な修正・問い合わせ対応 | 1〜5万円 |
| 機能追加 | 運用しながらの改善(都度見積) | 案件ごと |
投資回収をどう考えるか
「システムに300万円は高い」と感じるのは自然です。ただ、建設業の場合、判断基準は「1本の工事の赤字をいくらまで許容できるか」に置き換えると分かりやすくなります。
年商5億円、年間30本の工事を扱う会社を例にします(一般的なモデルケース)。
- 1本あたり平均請負金額:約1,600万円
- 想定粗利率20%として、粗利:約320万円
- 予算超過が10%発生すると、粗利は約190万円まで低下
- 年間で3本この状態が起きると、失われる粗利は約390万円
このうち一部でも、早期発見と軌道修正で防げるなら、システム投資は数年で回収できる計算になります。逆に言えば、年間の予算超過額を把握していない会社は、投資判断そのものができない状態にあるとも言えます。
※ 上記は一般的なモデルケースであり、成果を保証するものではありません。
ROIの考え方をより詳しく知りたい方は、業務システム化の費用対効果(ROI)もあわせてご覧ください。
導入の進め方と、よくある失敗の回避策
失敗しない導入5ステップ
ステップ1:現状の原価把握サイクルを測る(2〜4週間)
いきなり要件定義から入らないでください。まず「今、原価が見えるまで何日かかっているか」を費目別に測ります。この数字がないと、改善したかどうかも分かりません。あわせて、直近1年の工事について、実行予算と最終原価の差額を集計します。
ステップ2:管理の単位とルールを決める(2〜4週間)
工事番号の採番ルール、工種の区分、費目の定義、共通費の配賦方法。ここを社内で合意してから設計に入ります。システム開発でつまずく会社の大半は、この段階を飛ばしています。要件定義の具体的な進め方は業務システム要件定義の進め方で解説しています。
ステップ3:既製品で足りるか検証する(2〜4週間)
ステップ2で整理した要件を持って、建設業向けパッケージのデモを受けます。このとき自社の実際の工事データを1本持ち込んで、それが入力できるか試させてもらうのが鉄則です。カタログ機能ではなく、自社の現物で確認します。
ステップ4:スモールスタートで作る(3〜6か月)
既製品で足りないと判断した場合も、最初から全機能を作らないでください。工事マスタ・実行予算・予実対比の3つだけで始め、実際の工事を5本ほど流してみる。ここで必ず「思っていたのと違う」点が出てくるので、それを反映してから拡張します。
ステップ5:現場に定着させる(3〜6か月)
システムは入れた瞬間から使われるものではありません。定着に効く施策は次の3つです。
- 入力項目を減らす——現場が入れるのは3項目まで、が目安
- 入力した人が得をする——入力すると自分の現場の予算残が見える、など
- 経営会議の議題に載せる——システムの数字を使って議論する。使われる場があると入力が続きます
ITツールが現場で使われなくなる構造的な理由については、ITツールが現場で使われない理由で詳しく整理しています。
導入でよくある6つの失敗と回避策
細かすぎる原価区分を作ってしまう
費目を50個も100個も作ると、入力側が分類できず適当な区分に放り込まれます。結果、集計しても意味のない数字になる。最初は10〜15区分程度に絞り、必要になってから増やすのが正解です。
会計の締めとシステムを一体化させる
管理会計としての原価把握と、税務・決算のための会計は目的が違います。システムに厳密な会計精度を求めると、入力が重くなり鮮度が落ちます。速報値と確定値を分けて考えてください。
現場責任者を巻き込まずに導入する
経理と経営層だけで決めたシステムは、現場に「監視されている」と受け取られます。設計段階から現場責任者に入ってもらい、「あなたの現場を守るための道具」として位置づけることが必要です。
Excelとの二重管理が続く
システムに入れつつ、慣れたExcelも並行して使う状態が半年続くと、ほぼ確実にExcel側が正になります。移行日を決め、その日以降はExcelを更新しない、と明確に線を引くべきです。
過去データを全部移行しようとする
過去5年分の工事データ移行に何か月もかけるより、進行中の工事と新規工事だけを対象に始めるほうが、はるかに早く効果が出ます。過去分はExcelを参照用に残せば十分です。
作った後に誰も面倒を見ない
担当者の異動や退職で、システムを理解している人がいなくなる。開発時点で保守体制と、簡単な設定変更を社内でできる範囲を決めておくことが重要です。
属人化そのものを解消する考え方は、属人化を解消する3つの手順でも取り上げています。
Excelでの工事台帳管理は、いつシステム化を考えるべきですか?
目安としては、同時進行の工事が10本を超えたとき、または原価の集計に月2日以上かかっているときです。加えて「工事が終わってから赤字に気づいた」経験が年に2回以上あるなら、金額的にシステム投資を検討する段階に来ています。工事本数が少なくても、1本あたりの金額が大きい業態では早めの検討が有効です。
会計ソフトの部門別管理で代用できませんか?
ある程度は可能ですが、限界があります。会計ソフトの部門管理は「確定した仕訳」を集計する仕組みなので、請求書が届く前の発注済み・未検収の金額は反映されません。建設業で最も重要な「まだ請求は来ていないが、すでに確定している外注費」が見えないため、着地見込みの精度が上がりにくいのが実情です。
下請け中心の会社でも導入する意味はありますか?
むしろ下請け中心の会社ほど効果が出やすい面があります。元請から提示される単価は動かせないため、利益は原価のコントロールでしか生まれません。常用と請負が混在する現場ごとの採算、支給材の扱い、元請ごとの査定サイクルの違いを整理できると、どの元請のどの種類の仕事が儲かっているかが見えるようになります。既製ソフトが対応しにくい領域なので、設計から相談いただくケースが多い分野です。
現場の職人がスマホ入力してくれるか不安です
その不安は正しく、実際に最も多い失敗要因です。対策は入力項目を極限まで減らすこと。現場名・日付・工数の3項目だけにして、選択式にする。写真を撮るだけで日報になる仕組みにする。あるいは現場入力を諦めて、事務所側で職長からの電話・LINEをまとめて入力する運用にする、という割り切りも十分ありです。全員が入力しなくても、原価の鮮度は上がります。
相談だけでも大丈夫ですか?何かを契約する必要はありますか?
相談だけで問題ありません。初回のご相談・お見積りは無料で、その後の契約義務も一切ありません。実際に「話を聞いた結果、市販の建設ソフトのほうが合っている」とお伝えして終わることもあります。売り込みは行いませんので、現状整理のつもりでお気軽にご利用ください。
滋賀県外・遠方でも対応できますか?
対応しています。LUCRISは滋賀県大津市を拠点としていますが、オンライン会議とチャットを併用することで全国のお客様をご支援しています。原価管理システムの要件整理は画面共有で現在のExcelを見ながら進められるため、対面でなくても支障はありません。必要に応じて訪問のご相談も承ります。
費用はどのくらいから始められますか?
既存の会計ソフトを活かして原価集計と予実管理の部分だけを作る「連携アドオン型」であれば、80〜250万円程度が目安です。工事マスタ・実行予算・予実対比に絞ったスモールスタートなら150〜300万円程度。いきなり全機能を作らず、効果の大きい部分から段階的に投資する方法をご提案しますので、予算の上限をお伝えいただければその範囲での設計案をお出しします。
作った後の保守やトラブル対応はどうなりますか?
月額の保守契約で、障害対応・軽微な修正・操作の問い合わせに対応します。あわせて、工種マスタや費目区分など運用で変わりやすい部分は、社内で設定変更できるように作るのが基本方針です。ベンダーに頼まないと何も変えられない状態は、長期的にお客様の負担になるためです。保守の考え方はシステム保守とはでも解説しています。
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